短歌 1991年 春

BERCONと書かれし銀の小さなる異国のマッチ花火の如し

オレンジののうぜんかづらみに行きてふうせんかづらの種もらひけり

雑草と化したる白き小さき花ブライダルベールは狭庭を埋む

風邪のわれ甘酸く臭ふ孫抱きて子の帰り待つ重たきかなよ

新しき帽子買ひしと友云ひぬ会ひたる時にかぶり来ずして

ガマ蛙池こはされてい居るところなきや隣家の池で啼きをり

ひたすらに歩めと医師にいはれたる友と行きたり赤札仁王

あくびする人の多きよ我も又つりこまれたる春の電車は

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雲間より地表見えたり海底をのぞくが如きいづこのくにぞ

機上より大地を見たり十時間たちて地球は懐かしきかな

人の住む町見ゆ森も川も見ゆいよいよ降りるチューリヒの街

この家に宿りてみれば便り出す心そぞろになくなりしかな