短歌 1994年 春

雨のなか歩いて帰る淋しさにたった一駅電車に乗りぬ

孤独なる老女とばかり思ひ人赤子背負いて雨の道くる

靴修理待たされながらその店の明るさにふと救はれており

電車の戸閉まる間際に傘立てて無理やり出でよ愚かなる吾

まだ若き従弟を癌で失いしこと人生の残酷おぼゆ

のろのろと歩み吾をば追い越していく若き人やはり年だナ

このころは女いかつく肩はりて男なで肩ジャンパー姿