短歌 1995年 冬

ちゃんばらの相手に吾は格好の相手なりしか五歳の孫に

いづれそは忘れ去られる愛なれど今はひたすらいとし孫たち

オレンジののうぜんかずら華やかにゆらげど孫等遠く住みおり

旅半ばめまひす我を案じたる夫寝言で「参ったなあ」と

窓際に席占むる夫少年の如く下界に眼をこらしゐる

オランダの運河のともしびきらめきて宿の窓よりあかず眺むる

二頭馬車初めて乗りてふと思ふ大草原の小さな家を

旅の子がぐっすり眠る吾がベッド読書を止めて吾れは添い寝す

帰りたる子が寄越したるFAXを読むより先に先ずは抱きしむ

味噌汁に削り節をば入れるとき猫はすりよる吾の足元