短歌 1999年 秋

梅雨空にのうぜんかづら咲きそめて我が心まで明るくなりぬ

ほんの少しほんの少しと夫云ひぬ御飯をよそうときの淋しさ

不思議なりクリスチャンでもない友が毎年くれるクリスマスカード

待ちわびしアダモの歌を直かに聞き心も軽く夜道を帰る

雨戸操るを忘れてゐたり我が庭のしろたへの梅一斉に咲く

なかなかに起きて来ぬ夫気になりて足音しのびのぞきに行きぬ

荒れ果てし我が家の庭に天降りし如とき色の薔薇は咲き出でぬ

千円でジャイアンツの旗買ひし孫ぢいちゃんにと云ひおいていくかな

足病めば雑草ぬけずどくだみの白き十字の花にうづまる

歯の抜けしわが笑ひ顔いつの間にか孫のそれとも似たりけるかな

笑ひつつ電話をくれる友なれば暗き心に明かりのともる

スイスより帰り来る子を待ちわびてファックスの部屋絶えず覗きぬ

一日が人生の旅そのものに思へる吾れの迎ふ師走かな