短歌 2000年 春

リハビリに夫婦で行ける送迎のバスより見ゆる木更津の海

鳩時計直して夫友人に会ひに行きたり暑き日の午後

さりげなく婿の持ち来しじゃが芋の大小ごろり玄関の前

お休みと云ひて二階に夫行きぬ口論したるあとではあれど

さびしーつと悲鳴に近き声あげし寡婦の言葉が耳をはなれず

エアコンをつけ変えたるに待ちし子は来ることもなく夏過ぎんとす

招かれて行きし孫等と過ごしたる運動会の日も遠くなり

臨海の事故で気付きぬスーパーに売れ残る水戸納豆の山

二階から声あり「花火やってるよ」テレビでそれに興ずる夫

暑き日はシーツ一つにくるまりて赤子のになりし心地で眠る

地震ありてかたへに来たり寝たる子はいつしかいびきをかいておるなり