短歌 2000年 秋

気が付けば梅雨晴れの庭一面にねじり花咲く面白きかな

色づきし大きな梅の実落ちておりそっと拾いぬその見事さに

朧月かかれるかたのポストまで夏の便りを出しにいくかな

子の土産なりし重たきオルゴール魔笛の曲は我を慰む

鳥に餌あたえる夫は入院し空の餌入れ風に揺れおり

ダイヤより我には尊く思はるるハイビスカスの最後の蕾

包丁を買って来るに夕飯のおかずにはてなまたも悩めり

口開けて夫寝てをり疲れしか確定申告吾に教へて

マイッタナー朝いちばんに夫の声寝声かうつつか聞く我辛し

此の町でただ一軒のレコード屋店じまいした後の淋しさ

風呂で寝てめざめし時の淋しさは浦島太郎の如き心地よ

磨かれし硝子戸なれば小雀は頭ぶつけて飛び去りしかな

退院すればはや庭にくる鳥たちの餌入れみたす夫なりけり

おじいちゃん退院したのときく孫は煙草止めたの?お酒止めたの?