短歌 2001年 秋

寒き日に酸素器かつぎ我が夫は確定申告せぬと出掛けぬ

雪の上にパン屑まけば争ひて鳥等は来たり食べつくすなり

病院の窓から見ゆるマンションのベランダに烏とまりけるかな

病院の夕食時の淋しさやあと寝るだけときめられてゐる

病院の消灯まぎは聞こえ来る拍子木の音人恋しかり

やせ細り指輪ぐるぐる廻転す結婚指輪中指に指す

今一度夫と行きたし多摩川の土手の櫻の満開時に

夜は字がよめなくなると母云いき我もしかなり今わかりけり

多摩川の土手へ乳母車押したりき今歩行器で我が身をはこぶ

わがそばに家族のたれかおらぬ時心淋しくなりし此の頃

お帰りと早くいいたしなかなかに帰り来ぬ子を待つ虫の秋