焼き跡に祖母とあかぎをつみにけり想い出の味かすかに残る
莟もつのうぜんかずら折れたればバンドエイドを巻きて咲かせぬ
隣人が兄亡き後はきょうだいで家たてゆかんと挨拶に来る
暗がりにぎっしり並ぶ自転車に人の匂いす夜のマンション
雨戸開け今日も楽しむ野牡丹のきりりと冴えし紫の花
赤き星中秋の月に連れ添いて夜更けの家並み静かに照らす
鬼の如のばしたる爪白く塗りあな恐ろしき女高生かな
木の間より見ゆるコンビニ不夜城の如く闇夜に光り輝く
歌の本開けばすぐに眠くなり冷蔵庫開け取り出すプディング
鈴付けし鍵もち夜の散歩行きソフトクリームなめなめ帰る
台所蟻に占領されしかな見るたびつぶすことに疲れり
子が買いし麻の緑の長暖簾風に吹かれて瓢箪揺らぐ