短歌 2004年 春

焼き跡に祖母とあかぎをつみにけり想い出の味かすかに残る

莟もつのうぜんかずら折れたればバンドエイドを巻きて咲かせぬ

隣人が兄亡き後はきょうだいで家たてゆかんと挨拶に来る

暗がりにぎっしり並ぶ自転車に人の匂いす夜のマンション

雨戸開け今日も楽しむ野牡丹のきりりと冴えし紫の花

赤き星中秋の月に連れ添いて夜更けの家並み静かに照らす

鬼の如のばしたる爪白く塗りあな恐ろしき女高生かな

木の間より見ゆるコンビニ不夜城の如く闇夜に光り輝く

歌の本開けばすぐに眠くなり冷蔵庫開け取り出すプディング

鈴付けし鍵もち夜の散歩行きソフトクリームなめなめ帰る

台所蟻に占領されしかな見るたびつぶすことに疲れり

子が買いし麻の緑の長暖簾風に吹かれて瓢箪揺らぐ