可憐なる菫に混じり金色の雉蓆(きじむしろ)咲く我が庭の春
隣人が我に残せし赤い木瓜地に枝広げ咲き乱るるよ
愛こもるこの手袋は絶対に落とすまいぞと心に決める
何故にするどき棘で身を守るブウゲンビリヤ美しき紅色
亡くなりし前夜一人でゆあみする夫に声をかけざりしを悔ゆ
「笑点」を見つつ呑みつつ笑いたる夫でありきその顔うかぶ
着脹れし背中かゆくて孫の手をつかえば亡き夫思い出すなり
お彼岸に子の土産なる草団子昔変わらぬ素朴な味す
道筋に風船かずら風にゆれ両手でポンと割ってみたいよ
園児らをサアクル車に乗せ押していく冬空の下頼もし保母さん
送られし白桃あまりおいしくて茂吉の白桃かくあらんかと
薔薇の枝にとまっていたる赤とんぼ我が家を訪れたる使者かな
庭隅にひっそりと咲く石蕗の黄色の花はさびしかりけり
二年半過ぎれど夫の腕時計生きるが如く時刻みけり