短歌 2004年 秋

可憐なる菫に混じり金色の雉蓆(きじむしろ)咲く我が庭の春

隣人が我に残せし赤い木瓜地に枝広げ咲き乱るるよ

愛こもるこの手袋は絶対に落とすまいぞと心に決める

何故にするどき棘で身を守るブウゲンビリヤ美しき紅色

亡くなりし前夜一人でゆあみする夫に声をかけざりしを悔ゆ

「笑点」を見つつ呑みつつ笑いたる夫でありきその顔うかぶ

着脹れし背中かゆくて孫の手をつかえば亡き夫思い出すなり

お彼岸に子の土産なる草団子昔変わらぬ素朴な味す

道筋に風船かずら風にゆれ両手でポンと割ってみたいよ

園児らをサアクル車に乗せ押していく冬空の下頼もし保母さん

送られし白桃あまりおいしくて茂吉の白桃かくあらんかと

薔薇の枝にとまっていたる赤とんぼ我が家を訪れたる使者かな

庭隅にひっそりと咲く石蕗の黄色の花はさびしかりけり

二年半過ぎれど夫の腕時計生きるが如く時刻みけり