サーカスで序幕の演奏始まればなぜかわからず涙湧くかな
玄関の外で電話の鳴るをききあわててとびこむ 靴はいたまま
いずこから来たか鶯連れ添って我が家の庭でしばし憩いぬ
春雷を遠くにききて夜が明けて梅の花びら一面に散る
我が庭の狭きところに花蘇芳ひとり咲き出し驚きうれし
どくだみの花の白きを美しとおもふ此の頃面白きかな
黄色なる小花一度の咲きはじむようやくわかる蛇苺なり
えにしだは往にし妹の軒先に咲いていたりきただなつかしき
望まれて生まれて来る幸せを幾度父母に感謝するかな
隔てなくしゃべれる友とわかれては一期一会は淋しかりけり
今のことすぐに忘れる悲しさよ日に幾度も新聞を見る
大根の花の紫咲き出して雨降りだせば心のふるさと
咳止めの薬と思ひ買いたりき巣鴨地蔵の市で花梨を
黄の牡丹二輪友よりたまはりて夫の遺影にかざるうれしさ
冬の間は枯れしと思へし薔薇なれど春めきてきてふくらみにけり
出掛け際野菜スープを作りゆく子のやさしさに胸をうつなり
寒いからポタージュスープにすうるわねと心やさしき子の言葉かな
久々の友の便りが懐かしく一人声だし読んでみるかな
子供の日夕方になり柏餅食べたくなりて買いにいくかな
若き日の植物採集でおぼえたる最初の花の名おほいぬのふぐり