短歌ほか 2011年

不忍の池の油絵我が心慰めるなる暑きこの日も

塩塩と哀願したる夫にも枝豆の塩かすかでありき

暑いなと思っていれば庭の木に蝉やかましく鳴き始めけり

まだ生きているぞとばかり痰を吐く

体操は今日一日の予約かな

永の字は愛する父の名の一字新聞歌壇にみればなつかし

生きること至難になりし日々なれど子にさそはれて多摩川散歩

僅かなる我の記憶を試さんとひいてみるなり花の辞典を

岬までドライブしようと夫いいぬ昨日明け方夢にみしかな

我にとりて食器割らぬが一仕事

不安なる思ひ満ちくるときに我牛乳飲めば心やすらぐ

ニュースでは雷雨大雨来ると云ふ夕方帰る子を案じ待つ

明日は何するかわからぬ今朝の我

ひたすらに湯の沸くヤカンみつめけり