不忍の池の油絵我が心慰めるなる暑きこの日も
塩塩と哀願したる夫にも枝豆の塩かすかでありき
暑いなと思っていれば庭の木に蝉やかましく鳴き始めけり
まだ生きているぞとばかり痰を吐く
体操は今日一日の予約かな
永の字は愛する父の名の一字新聞歌壇にみればなつかし
生きること至難になりし日々なれど子にさそはれて多摩川散歩
僅かなる我の記憶を試さんとひいてみるなり花の辞典を
岬までドライブしようと夫いいぬ昨日明け方夢にみしかな
我にとりて食器割らぬが一仕事
不安なる思ひ満ちくるときに我牛乳飲めば心やすらぐ
ニュースでは雷雨大雨来ると云ふ夕方帰る子を案じ待つ
明日は何するかわからぬ今朝の我
ひたすらに湯の沸くヤカンみつめけり