ゴミ出しに行けば子連れの若夫婦我にほほえみ挨拶をせり
年月不明の歌いくつか
見覚えのある着物 まといし亡き母を抱き上げたる夢みた ある日
祖母と我 言問橋を渡しけり 今は昔の墓参りかな
寒き日もまた良いものか 熱々の焼林檎食べ温まる午後
暮れに子は包丁並べて砥ぎいたり すること何か我が夫に似て
寿の字の傾きたる正月の御供へ飾り今日で三日目
年女と人に言われて気づきたる娘はすでに三十五歳
酒飲みて太平楽を決め込みし夫の過ごす寝正月かな
月日たち絵にのみ残る桃源郷 父の描きし農家の庭先