短歌ほか 2016年

ゴミ出しに行けば子連れの若夫婦我にほほえみ挨拶をせり

母の日記。起きたこと、話したこと、思い出したこと。好きな絵や新聞のコラム、好きな有名人の写真などを貼っていた。

年月不明の歌いくつか

見覚えのある着物 まといし亡き母を抱き上げたる夢みた ある日

祖母と我 言問橋を渡しけり 今は昔の墓参りかな

寒き日もまた良いものか 熱々の焼林檎食べ温まる午後

暮れに子は包丁並べて砥ぎいたり すること何か我が夫に似て

寿の字の傾きたる正月の御供へ飾り今日で三日目

年女と人に言われて気づきたる娘はすでに三十五歳

酒飲みて太平楽を決め込みし夫の過ごす寝正月かな

月日たち絵にのみ残る桃源郷 父の描きし農家の庭先