短歌 1996年 夏

頼りなき吾をたよるか吾が夫は薬の飲み方までを真似する

塀の上に雀並びて餌を待つ夫の撒くをいまかいまかと

化粧水の蓋をすること此の頃は忘るることあり己れ淋しむ

まだ寒き頃に生まれしをさなをば奈津子とつけて子は知らせ来ぬ

夫と向かひ合ひて書をば読むときに我いねぶりて二度本落とす

ジャンケンポン隣家の幼なはしゃぎつつ遊ぶ声ききなごめる日かな

路地裏にひょろり出て来たのら猫のその窶れざまに胸痛みけり

旅立ちの日が近づけば嬉しくて寝てもいられず起き出しにけり

人生の思い出作り夫と吾最後の旅を今楽しまん

朝がらす静かに啼けりなんとなく今日はよきことあるやもしれず

ちんまりと座りているよ白猫は削り節をばもらはんとして