うたた寝の我が子の髪にいく筋か白きをみれば苦労しのばる
陽のささぬ我が家の庭に野菫の群れなして咲くうれしきことよ
夕闇の長野の森の空間にヘールボップ彗星きらめくを見ぬ
一夜あけ薔薇一せいに咲き出しぬ我が眼うたがふよろこびにして
起き出でて雨戸を繰るは楽しけれ今盛りなる薔薇の花ばな
朝の間を夫に寄り添ひ顔そりてもらふひとときわれの倖せ
仏壇に母の日のカードとカーネーションそなへて在りし日をしのびたり
夫の留守にナッキンコールにききほれて空豆茹でゐしことも忘れぬ
草取りを怠りしかばどくだみの十字の花は庭一面に咲く
思ふことうまくしゃべれぬもどかしさいつから吾は人魚になりし
膝病みて体操の時よろめくを恥ずかしく思ふ如何にかくさん
久々の友の便りにそそくさと夜のポストに返事をはこぶ
父母に甘えるころにもどりたし何故人間は年をとるのだろう
夕食の前の散歩に森に行き栗鼠見つけたり木の間がくれに
子に会いに行きたる旅のひと月もあっといふ間の出来事となる